1章 彼女を探して三千里~ストーカーではありません~

5/21
前へ
/97ページ
次へ
俺は小学校1年生から中学3年生まで空手をやっていました。 そうです、想い人がピンチなときに助けられる正義のヒーローになるために約9年間も汗臭い道場に通い続けました。 すいません、本当に汗臭いなんて思ってませんから! 「テメェ! よくも!」 崩れ落ちたヤンキーA君、A君を見た下っ端のヤンキーB君がキレました。 これだからゆとりは……。 「三枚におろしてやんよ」 B君に人差し指を向け、キリリっとした顔で言い放ちました。 このセリフも言ってみたかったんですよ。 「ちっ……!」 ヤンキーB君はポケットからメリケンサックを取りだしそれを右手に装着しました。 そしてヤンキーA君よりキレのある左ストレートを放ちました。 うほっ!良い左ストレート! え?右じゃなくて左?なんて考えている刹那、過去の思い出が蘇ってきました。 なんでこんなときに過去の思い出が蘇るか……それは大人の事情です。 さて思い出に浸りますか。 『いいか? お前は強い。 お前はまだ小4だがそこらへんの不良なら余裕でやっつけるだろう。 それ故にその力がいつか凶器となってしまうかもしれない。 だからお前に制限をつける。 その拳を振るって良いのは大切な人を守るときだけだ。分かったか?』 『分かりました! 師匠!』 ──師匠汗臭い! 『よし!それでは稽古を始める!』 『オスっ!』 ──だから汗臭い! 過去の思い出と一緒に汗の酸っぱいような変なニオイも思い出してしまいました。 ……てか普通に師匠との約束忘れちゃってました。てへっ。 「いっ……!」 過去の思い出に浸っていると右頬に痛みが走りました。 そういえば喧嘩中でしたね。 それよりどうしましょう。反撃できなくなっちゃいました。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

360人が本棚に入れています
本棚に追加