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特に土の力を持つ人間は癒しの力を持つ」
ナオキは、医者の言葉に納得していた。
記憶はないが、何故自分が水の力を使えるか、わからなかったからだ。
そして、ユースケの力も。
「彼は、土の力を持って生まれた。
ここから先は推測だが、彼自身、土の力を意識していなかったと思う。
土の力を、戦闘力に変え、戦ってきたのであろう。
だが本来、土の力とは癒し。大地から生まれる物を育み、その包容力で、癒しとする。
今、本来ある力が、目覚めたのだろう。友を、命懸けで救おうとする、想いが力になったのだろう」
彼自身から、放たれていた黄色い光が、少しずつ薄れ、ゆっくりと消えていき、それに合わせるかのように、タケシの目が開いた。
「俺は…。一体?」
「目ぇ、覚めたか。よかった。本当によかっ…」
彼は、タケシの上に倒れた。
「お、おいっ!どっちが、大丈夫かよ。それに重い!助けてくれ」
医者とナオキが、彼を担いで、隣のベッドに寝かせる。
心配そうな二人に医者は、
「土の力に目覚めたばかりで、癒しの力を使ったから、疲れたのだろう。少し眠れば、気がつく。
それにしても、これ程の、土の力を使う人間は、わしも長い間医者をしているが、初めて見た」
医者が、目を細める。
事情が飲み込めない、タケシにナオキと医者が、今までの話をすると、タケシは、何かを考え込むように、横になった。ナオキは、医者に自分の記憶喪失について話すが、手だてがないと知るが、
「それでも、僕は生きています。これからも旅を続けます。いつか、記憶が戻る日まで」
「その旅、俺も付き合うぜ」
彼は、目が覚めていたが、ナオキの話を聞いていたのだ。
そして、
「決めた。俺も一緒に行きたいが、いいか?」
タケシの言葉に、二人がニッコリと笑う。
こうして、三人の旅が始まろうとしていたが、
「ちょっと、待ってくれ。生命の水の番人として、やることやっていく。旅立ちはそれからにしてくれ」
旅立ちの前に、思わぬ出鼻を挫かれ、
「なんだそりゃ!」
と、彼のワガママはとにかく、タケシは、生命の水の番人としての役目を果たすべく、生命の水の井戸に向かった。
無論、二人とも一緒だ。
タケシは、生命の水が満ちた、井戸の前に立ち、
「ユースケ、ナオキ。二人で、水脈の流れを探って、一旦水脈を止めてくれ」
「えっ…、でも、それをしたら」
ナオキが、止めようとするが、
「いいから、やってくれ。これが俺の役目だ」
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