本編

11/39

46人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
僕は、水の力を持っているから、水の変化がわかったけど」 「そりゃそうだ。伊達に井戸の番人してる訳じゃない」 タケシは、井戸に刻まれた傷を示した。 「この井戸を狙う奴は、昔から絶えなくてね…。生命の水って知って、狙う奴も多かった。 だから、俺の一族は、その度に生命の水を一時的に封印して、守ってきたんだ」タケシの言葉には、井戸の番人としての、一族の誇りが込もっていた。 そんなタケシに二人は、感慨無量だった。 「あとは、先生に生命の水を任せて、旅立ちの準備だ」 ごく自然に、タケシを先頭に、三人が歩き出す。 新たなる、旅がはじまる。 タケシは、医者の先生に、事情を話して、生命の水を託すと二人に、 「次に目指すは、フロンティア・ワールドの中心。ありとあらゆる情報が集まる町。通称『風の町』だ」 二人とも?と、言う顔をするので、呆れるタケシ。 「あのなー。お前ら、グランド・ワンがどこにあるのか、知っているのか?」 そう言われて、ポンと手を叩く彼。 「そりゃ、そうだ。世界回ってりゃ、そのうち見つかるってモンじゃねぇからな」 タケシは、思いっきりため息をつくと、 「だと、思った。だからこそ、風の町に行って、情報を集める。ナオキ、もしかすると、お前の記憶に関する情報もあるかも知れんしな」 「うん」 ナオキは、いつもの様に、微笑みながらうなずく。 「でだ。風の町への近道は知っているが、一日砂漠越えがあるから、覚悟しとけよ」 「えー!砂漠越えが、あるのかよ…。もう、やだ」 彼のワガママに、 「仕方がないだろ。ここは砂漠に囲まれた町だ。砂漠越えが一日で済むから、我慢しろ。それに少しだけ、生命の水を分けて貰うし、旅支度もしっかりする。いつ戻れるか、分からないからな」 タケシの覚悟に、二人は改めて、この旅が重い事を感じる。特に彼は、自分の力を試したいと、故郷を出てきただけだったのが、こんな運命が待っているとは、思ってもいなかった。 が、後悔していない。 ナオキとタケシ。自分より強い奴と戦い、自分の思い上がりを知り、絶対に許せない敵を知って、共に倒す仲間に出会えた事を、彼は感謝していた。 「さ、支度を整えて、出発するぞ」 三人は、それぞれの想いを胸に、砂漠の町を後にした。 砂漠を越え、見えて来た町は、周囲を強固な壁に囲まれた町だった。 「えっ…。前に来た時とは、様子が違う。何があったんだ?」 タケシは、町の変わりように驚く。image=355184501.jpg
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加