本編

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彼はヒロミに聞くと、 「父がいなくなった間に、なくなっていた、この町本来の姿に戻すのです。見てて下さい」 父親は、両手を広げて、 「町よ。私は、戻って来た。さあ、元に戻ってくれ」 そう言うと、町の外にあった壁の向こう側から、風が吹いてその風は段々と強くなり、町を取り巻いていった。 町の中にも、風が吹いて来た。 「これが、本来の風の町です」 ヒロミの説明に、呆気に取られる、ナオキとユースケ。 タケシは、知っているので驚きはしない。 「皆様には礼を言わないと。特にユースケ殿には」 彼は、その言葉に、 「へ?俺?そりゃ、確かに、助けたけど…。俺だけじゃ無理だったし。 それに、ブラック・オニキスの野郎が、ヤな事ばかりするから、それが許せないだけって」 「タケシ殿も、ナオキ殿も、ありがとう。 ただ、ユースケ殿には、私から差し上げたい物がありまして…。 ここでは何ですし、私を含め疲れています。家に戻り、お話しましょう」 そう言うと、歓迎ムードが冷めやらぬ中、全員ヒロミの家に行った。 各々、椅子に座ると、父親は、奥の棚の上から、重たそうな箱を慎重に下ろし、それをテーブルの上に置いた。 「父さん。それは…」 ヒロミが驚くが、 「前に、お前は『使わないモノには、意味がない』と、言ったが、これは、ユースケ殿にしか、使いこなせないだろう」 父親は、箱を開けると、そこには、長さ約60センチ、銀色でくの字に変形した物が、保管されていた。 「これは、グランド・ワンからもたらされたとも、異世界から来た物とも言われてますが、はっきりとしません。 が、これは異世界では『ブーメラン』と呼ばれる武器です」 三人とも、初めてみるブーメランを、じっと見る。 「このブーメランを、ユースケ殿、貴方に差し上げたい」 その言葉に、驚く彼。 「待ってくれよ。俺は、今まで武器なしで戦って勝って…、いや、負けたこともあるけど、でも、いきなり、異世界の武器を俺にって…」 「このブーメランは、特殊な武器で、投げる武器ですが、普通投げた武器は、戻って来ませんが、これは投げた者に戻って来ます」 「すっげー!流石、異世界の武器は違うな」 タケシが、驚嘆の声を上げるが、 「ただ…、これを使いこなすのは、かなり難しいのです」 そう言うと、父親はブーメランの先端に指を指して、スッとスライドさせると、一枚に見えたブーメランが、複数枚重なっているのが判る。image=356918083.jpg
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