本編

20/39

46人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「このブーメランは8枚が重なって、出来ています。ですから、一枚一枚は軽いのですが、8枚重なると、かなりの重量になります。 慣れてくれば、投げて、8方向への攻撃も出来ますが、この武器の真髄は、一枚で投げた時にあります」 父親は、指をスライドさせて、一枚に戻すと、話を続ける。 「一枚一枚でも、威力はかなりの物です。ですが、本来の形で投げると、強力無比な武器になります。 故に、投げる力もさることながら、帰ってくる、ブーメランを止めなくてはならないのですが、それにも力が要ります」 「おいおい。そんな武器、俺に使いこなせるのかよ。 でも、面白そうじゃねぇか。使い方、教えてくれよ」 彼は、驚きもあったが、まるで新しい玩具をくれた子供の様に、はしゃいでいた。 「分かりました」 父親が、ブーメランを一枚スライドさせ、投げずに説明する。 ブーメランは、投げると円状に飛んでいき、投げた者に戻ってくる。 投げる人の力にもよるが、帰って来た時の反動は半端ではない。 現に、ブーメランを使おうと、何人もの挑戦者がいたが、手で取ろうとすると、腕を千切られたり、命を落とした者もいると言う。 「成る程ね。だから、俺じゃねぇと使いこなせないと。 腕で無理なら、足で叩き落とすまでさ」 彼の強靭な力と、飛び抜けた身体能力だからこそ出来る。 父親は、そう思ったのだ。ヒロミは、父親の考えが分かり、納得する。 「さてと、実際にやってみんべ」 「やるって、どうやって?」 ナオキが、聞くと、 「親父さんが戻って来て、風の防御壁が出来た。これが、本来の風の町だろ」 「そう。風の防御壁がなくて、実際の壁があったから、おどろいたのさ」 タケシがそう言うと、 「だから、壁をぶっ壊す。この羽でな」 「羽?それは…」 ヒロミが、言いかけるが、 「何かブーメランって名前…、好きじゃねぇんだ。 翼か羽かで、迷ったけど、これで俺自身が飛ばないから、翼は止めて、羽にしたんだ」 ユースケらしいと、うなずく二人。ちょっと付いて行けない、ヒロミと父親に、 「悪いけど、この町の中央に案内してくれ。あと、壁から人を離してくれないか?」 彼の要請に、二人は動き、あっという間に話は広がり、彼達が町の中央に着いた時には、人だかりが出来ていた。 彼は、頭をポリポリかくと、 「見せモンじゃねぇんだが。まあ、いいか。 そこ、退いてろ。投げるぞ」
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加