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「このブーメランは8枚が重なって、出来ています。ですから、一枚一枚は軽いのですが、8枚重なると、かなりの重量になります。
慣れてくれば、投げて、8方向への攻撃も出来ますが、この武器の真髄は、一枚で投げた時にあります」
父親は、指をスライドさせて、一枚に戻すと、話を続ける。
「一枚一枚でも、威力はかなりの物です。ですが、本来の形で投げると、強力無比な武器になります。
故に、投げる力もさることながら、帰ってくる、ブーメランを止めなくてはならないのですが、それにも力が要ります」
「おいおい。そんな武器、俺に使いこなせるのかよ。
でも、面白そうじゃねぇか。使い方、教えてくれよ」
彼は、驚きもあったが、まるで新しい玩具をくれた子供の様に、はしゃいでいた。
「分かりました」
父親が、ブーメランを一枚スライドさせ、投げずに説明する。
ブーメランは、投げると円状に飛んでいき、投げた者に戻ってくる。
投げる人の力にもよるが、帰って来た時の反動は半端ではない。
現に、ブーメランを使おうと、何人もの挑戦者がいたが、手で取ろうとすると、腕を千切られたり、命を落とした者もいると言う。
「成る程ね。だから、俺じゃねぇと使いこなせないと。
腕で無理なら、足で叩き落とすまでさ」
彼の強靭な力と、飛び抜けた身体能力だからこそ出来る。
父親は、そう思ったのだ。ヒロミは、父親の考えが分かり、納得する。
「さてと、実際にやってみんべ」
「やるって、どうやって?」
ナオキが、聞くと、
「親父さんが戻って来て、風の防御壁が出来た。これが、本来の風の町だろ」
「そう。風の防御壁がなくて、実際の壁があったから、おどろいたのさ」
タケシがそう言うと、
「だから、壁をぶっ壊す。この羽でな」
「羽?それは…」
ヒロミが、言いかけるが、
「何かブーメランって名前…、好きじゃねぇんだ。
翼か羽かで、迷ったけど、これで俺自身が飛ばないから、翼は止めて、羽にしたんだ」
ユースケらしいと、うなずく二人。ちょっと付いて行けない、ヒロミと父親に、
「悪いけど、この町の中央に案内してくれ。あと、壁から人を離してくれないか?」
彼の要請に、二人は動き、あっという間に話は広がり、彼達が町の中央に着いた時には、人だかりが出来ていた。
彼は、頭をポリポリかくと、
「見せモンじゃねぇんだが。まあ、いいか。
そこ、退いてろ。投げるぞ」
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