本編

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彼は、右腕に羽を持ち、 「さあ、俺の羽。飛んでこい!」 体を反らせ、力を込めて、羽を投げる。ゴッと、右足が地面にのめり込む。 羽は、真っ直ぐに壁に当たると、壁を砕きながら、突き進む。 その威力に、驚嘆の声が上がる。 砕けた壁は、風の防御壁に巻き上げられてゆく。 羽は、壁を全て砕き、彼の元に帰って来る。 「ウォォッ!」 と、気合いを入れ、羽を右足で叩き落とす。 ザクッと、羽が地面に突き刺さる。彼は、羽をまた手に持ち、 「すっげー、気にいった。これ、本当に俺が貰っていいのか?」 ニッコリ笑って、うなずく父親。 「じゃ、遠慮なく貰う」 町の人々の、歓声や驚嘆の声が止まない中、 「ところでよ。羽を剥き出しのまま、持ち歩くのは、嫌なんだけど」 と、彼がヒロミに言うと、 「それなら、道具屋に行って、入れ物を作って貰いましょう。 あと、皆さんに見せたいのが有りますので」 それを聞いて、タケシが、 「それなら、俺が貰った楽器の入れ物も作って欲しいんだけど、いいか?」 「ええ。構いませんよ」 「じゃ、持ってくる。道具屋の場所は分かるから、そこで合流しよう」 と、タケシは、ヒロミの家に向かう。 羽の行方を見守っていた父親が、町中の人々に囲まれて、色々と聞かれている隙を付いて、残りの二人は、ヒロミの案内で道具屋に向かう。 「これは、ヒロミ様。何かご入り用ですか?」 腰の低い、道具屋の主人に、彼は、 「羽が入れられて、出し入れが簡単で、持ち歩くのが出来るような袋、作って欲しいんだけど」 彼の、ワガママな注文に、主人はいささか困った顔をしたが、 「分かりました。2・3日頂きますが、それでよろしいですか?」 「すぐは、無理か…。ま、しゃあないか。いいぜ。その代わり、いいの作ってくれよ」 「無論です。私も、伝説のブーメランの入れ物を作るのは光栄ですから」 「だから、ブーメランじゃなくて羽!」 そんなやり取りをしていると、楽器を持って来た、タケシが合流。 道具屋の主人は、聞いてはいたが、見たことのない楽器を興味深く見ていた。 タケシも、彼と同じ注文をしたので、主人はまた困った顔をして、同じ答えをだしたので、三人は笑い、タケシは何事かと、不思議な顔をする。 ヒロミは、先ほどのやり取りを説明すると、タケシは呆れ、主人は済まなそうに、笑った。道具屋に、羽と楽器を預け、ヒロミの案内で町の外れに出る。 そこには、大きな建物があった。image=358297545.jpg
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