46人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
ヒロミが、両開きの扉を開けると、そこには三人が見たことのない物があった。
「これは、異世界ではヨットと呼ばれる風で動く乗り物です。
グランド・ワンが眠る地を僕とこの町の有志で行こうと、作っていたのですが、皆さんと一緒に行こうと思いまして」
初めてみる乗り物に、三人はただ驚いていた。
「ヨットは本来ならこういう形ではなく、水の上を動く乗り物なのですが、グランド・ワンの眠る地がどんな所か、調べても分からないので、こんな形になりました」
大きな胴体に、白い帆が立ち、下には車輪が付いていた。
彼は、段々とイタズラ心をくすぐられた。
「これでも恰好いいけど」
彼は、乗り物をじっくりと見て、
「ちょっと、待ってろ」
と、彼はあっという間にどこかに行き、沢山の荷物を抱えて、帰ってきた。
「どこ、行ってたんだ?」
タケシが聞くと、
「まあね。シシッ。さてと、三人とも外に出て」
そう言うと、彼は三人を無理矢理、外に出すと、
「いいか?俺がいいって言うまで、覗くなよ。覗いたら、殴る」
彼は、そう言い残し、扉を閉めた。
呆気に取られた三人は、
「一体、何を、しているのでしょうか?」
「分からん。覗いたら殴る、何て言ったし、見ない方がいいと思うけど、ユースケの奴…。何を考えてるんだ?」
「さあ…。何にしろ、暴力反対」
三人が、色々と話していると、
「うっし。出来たぞー。みんな、入っていいぞ」
彼の呼ぶ声に、三人が中に入ると、黄色く塗られた乗り物と、白い帆は、赤・青・黄・緑に、縦に分けて塗られていた。
「どうだ!かっけいいべ?」
顔にまで、色々な色の染料を付けて、彼は、乗り物の上で、胸を貼った。
あまりにもの事に、呆気に取られていた三人だが、
「あの…、ユースケさん。これは…一体?」
ヒロミが、顔をひきつらせ聞くと、
「俺なりに、恰好よくしたんだけど、ダメか?」
それを聞いて、タケシは怒り心頭で、
「あのなー!こんな目立ってどうするんだ!この馬鹿!」
「ん、だと」
ヒラリと、乗り物から降りて、彼はタケシに詰め寄る。
「俺が恰好よくしたのに、馬鹿とはなんだよ」
「馬鹿だから、そう言っただけだ」
「てめえ!そういや、タケシにはこないだ負けたから、勝負しろ!今度は負けねぇ」
「俺に、勝てると思ってるのか?」
一触即発、ヒロミがどうするべきかを考えている間もなく、二人の顔の前に、蒼冽の光が走る。
最初のコメントを投稿しよう!