本編

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ただし、始めて訪れる人は、敵意がないか調べますが」 「それで、あの時に」 「ええ。タケシさんと一緒だったので、大丈夫と思いましたが、これも決まりなので…」 旅は何事もなく、静かに進んで行く。 タケシは、ヒロミに楽器の使い方と、音の確認等をしながら、ナオキは蒼冽の手入れをして、彼は乗り物の先頭に立ち、まだ見ぬ封印の地に、思いを馳せていた。 それぞれの思いを乗せて、目的地へと順調に進んでいくように見えたが、旅立って3日たった時、 「おい、前に人が倒れているぞ」 との、彼の声に、ヒロミは乗り物を、倒れている人の近くに止めた。 彼が、乗り物から降りて、 「おい、大丈夫か?」 と、声をかける。 その人は、消え入りそうな声で、 「腹…減った…」 と、つぶやく。 「おい、どうするべ。こいつ、腹空かせて、こんなになっているみたいだけど」 「そうですね…風で調べましたが、敵意はないみたいですし、食料を上げて、近くの町に連れて行きましょう。僕達も、そろそろ、動かないベッドで寝たいですし」 「分かった」 彼はその人に、肩を貸し、乗り物に乗り込む。 タケシが、食料を用意すると、堰を切ったように食べて、あっという間に、食料が無くなる全員が呆れる程、あっという間に、食料を食べたその人は、 「いやー。助かりました。サータアンタギー」 と、頭を下げると、どこからか茶色の物が5つ出てきて、床に落ちる。 「な…。これは…」 いきなり現れた物に、全員が驚く。 「それ、サータアンタギーと言うお菓子で、砂糖の揚げ物って意味」 「それより、どこから出したんですか?」 「俺も、分かんね」 呆然と、二人のやり取りを見ていたタケシが、 「あーっ!こいつ、保存食まで食べて…。おい、ヒロミ。速く、どこかの町に行かないと、食料が空っぽだ…」 「分かってます。報告ですと、近い町まで半日です。それまでは、我慢して下さい」 「半日…。まあ、仕方がないな」 そのやり取りを聞いて、 「俺のせいで…、サータアンタギー」 と、その人がまた頭を下げると、サータアンタギーがまた増える。 「もういいって。ところで、名前は?」 「俺はシンタロウ。訳の分からん連中に追われていて、お腹空かせていたんだ。本当に」 また、シンタロウがサータアンタギーと、言いそうになるのを、 「だから、それはいいって」 と、止めるタケシ。益々、呆れるナオキと、サータアンタギーを手に取り、匂ったり、image=365141431.jpg
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