本編

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感触を確かめているヒロミ。 そこに彼が、一つサータアンタギーをつまんで食べる。 「なんだ。これ、甘くて美味いぞ」 ヒロミは、彼のとんでもない行動に、 「ユ、ユースケさん。訳の分からない物を食べないで下さい。毒が入ってたら、どうするんですか?」 「毒なんて、入ってねぇよ。それより、食べ物があるんだから食べようぜ。半日は、これで持たせないと、いけないんだろ?」 「まあ、そうですね。とりあえず、戴きましょう。シンタロウさんの話も聞きたいですし」 「俺の話?それは、無理。だって何にも覚えてないから」 段々と、小さくなっていく声に、ヒロミは、 「は?それは、どうしてですか?」 「だから、俺は自分の名前以外は、分かんないの。 何でサータアンタギーが出るのか、訳の分からない連中に追わるのも、さっぱり分かんない」 声が、小さくなるのが癖らしく、シンタロウはサータアンタギーを口に頬張った。 「つまりは、記憶喪失ですか?」 「ん…。何とも分かんない」 シンとなり、全員黙々とサータアンタギーを食べる。 水は残っていたので、分け合いながら、町へと進んでいく。ヒロミは、 「町に着いたら、タケシさんとは、食料調達をお願いします僕は、父と連絡を」 「連絡って、どうやって?」 タケシが聞くと、 「風の力です。口伝なので、これ以上は言えませんが、連絡は可能です。シンタロウさんについて、聞いてみます」 「みんな、いい人ばかりだー。 で、名前はなんだっけ?」 シンタロウの言葉に、全員呆れて、 「まだ、名乗ってないぞ。改めて、俺はタケシ」 「僕は、ヒロミです」 「俺は、ユースケ」 「僕はナオキだけど、シンタロウ君と良く似ているよ。僕も記憶がないからね」 それを聞いて、大げさに、ナオキの手を取って、 「仲間がいたー。よろしくね。」 と、手をブンブン降る。 「わ、分かったよ」ちょっと顔をひきつらせながら、笑顔で応じるナオキ。 やがて、目的の町へ着くと、全員乗り物から降りる。 「俺、こんな目立つ物に乗っていたのか。よくあいつら、見つけられなかったな」 「何か工夫してるってさ。それと、目立つんじゃなくて、俺が、恰好よくしたの」 と、軽くシンタロウの頭を小突く彼。 「いてて、良く分からんけど、助かったよ」 また、シンタロウがサータアンタギーと、言おうとしたので慌ててみんなで、口を塞ぐ。 町の中に入り、ヒロミは人気のないところで、父親と連絡。image=365141583.jpg
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