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「グランド・ワンは、すぐそこにいる。さあ、行ってやってくれ」
シンタロウが役目を終えて、ホッとしていると、触手がシンタロウを襲う。
「シンタロウ、避けろ!」
との、彼の警告より早く、触手はシンタロウに絡みついた。
触手が、シンタロウの体を探ると、シンタロウの白い服や、髪が黒に染まって行く。
タケシも、ナオキも、彼も触手を離そうと攻撃するが、びくともしない。ヒロミは、風で触手の情報を読み取りながら、どうするべきかを考えていた。
「いけない。みんな、下がって!」
シンタロウが必死に声を上げる。
パッと、全員離れたと同時に、柔らかい光が、シンタロウを包み、シンタロウの足元からサラサラと砂になって行く。
「おい!シンタロウ!」
彼の呼びかけに、シンタロウは、
「こうするしかないんだ…。こいつは、ブラック・オニキスからの触手で、俺の力を奪おうとしている。そんな事、させたらいけない。だから、俺自身を消滅させて、触手ごと消滅するよ」
「そんな…。他に手は無いの?」
ナオキが、悲しい声で呼びかけるが、シンタロウは首を横に振った。
「ヒロミ!何とか手立てはないのかよ!」
タケシが、ヒロミの肩を掴んで、揺さぶるが、
「すみません。僕は無力です…」
シンタロウの体は、ゆっくりと砂になって行き、絡みついていた触手も、砂になって行く。
「みんな…。短い間だったけど、楽しかったよ。本当に、ありが…と…」
最後の言葉は、消えて行った。
変わりに、黒く染まった帽子だけが、パサッと地面に落ちた。
シンタロウも、触手も、消えていた。
そこには、悲しみだけ残っていた。
残された帽子を抱きしめて、泣くタケシ。
蒼冽をむき出しのまま、呆然となるナオキ。
どこに怒りをぶつけていいか、分からない彼。
自分の力のなさに、頭を抱え崩れさる、ヒロミ。
だが、彼がギュッと拳を握りしめ、
「行こう。ブラック・オニキスを倒しに」
彼の、決意がこもった言葉は、全員を揺り動かした。
タケシは、帽子の埃を取り、大切に懐にしまい、ナオキは蒼冽を鞘に収めた。ヒロミは、意を決して立ち上がり、
「みなさん、行きましょう。と、言うより、向こうから来たみたいです」
振動が、大地を揺らす。その振動は、確実に全員に近づいて来た。振動が強くなるにつれ、その姿が見えて来た。
真っ黒な巨人。その周りからは、黒い力がまとわり付いて見える。![image=369218242.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/369218242.jpg?width=800&format=jpg)
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