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「ユースケさんは、願い事はないんですか?」
と、彼に聞くが、
「俺はねぇよ。あったにしても、願いは自分で叶えるさ」
「分かりました。では、僕の願いを叶えて貰います」
改めて、ヒロミはグランド・ワンの前に立つと、
「僕は、知恵が欲しいです。でも、僕は人間です。人として知りうる全ての知識を、僕に教えて下さい。決して悪用はしません」
「分かりました」
グランド・ワンからの光が、ヒロミの頭を包み込み、一瞬にして光が消える。
ヒロミは、その場に倒れそうになるのを、彼が抱き止める。
「大丈夫か?」
「はい。大丈夫ですよ」
ヒロミは頭を軽く振りながら、
「本来なら、時間を掛けて蓄積する知識を、一度に貰ったのですから、少し混乱していますが、大丈夫です」
「そうか…」
とは言え、まだだるそうなヒロミに肩を貸す彼。
「所で、ナオキさんの話を聞きたいのですが…。僕はまだはっきりと分かってないので」
「うん。分かったよ」
ナオキが、説明を始める。
ナオキのいた町は、フロンティア・ワールドの一番北に当たる所にある。町というより村に近いと言う。
そんな町に、武道を志し道を極めたのだが、更なる向上を目指し、あまり所在を知られたくない人々が、自然に集まってきたと言う。
ナオキも自然に武道に触れ合い、剣の道に入ったと…。
そこにブラック・オニキスが、グランド・ワンを襲いかかって、そこで町にいたナオキを含む、武道家が呼ばれ、ブラック・オニキスと戦ったと言う。蒼冽はその時にグランド・ワンから授けられて、剣技の達人に渡されたが、ブラック・オニキスに倒され、ナオキの手に渡った時に、蒼冽本来の力が発動。それでも倒すことは、出来ずに封印することに成功するが、封印の際に、ブラック・オニキスが蒼冽もろとも、全ての人間を消滅させようとした。それを救おうとグランド・ワンが、最後の力を振り絞り、町の人々を異世界に飛ばし、蒼冽はこの世界に残った。
そして、時間は動き始めた。
「すっげー!そんな事があったなんて。
ん?時間が止まっていたのなら、ナオキっていくつなんだ?」
彼の疑問は、最もだった。
「それは心配いりません」
あの優しい声が、頭に響く。
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