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「では、皆さんを風の力で、お送りします」
と、ヒロミが言うと、
「風の力って、大丈夫なのか?」
と、彼が聞くと、
「大丈夫です。知恵を貰ったお陰で、風の力をコントロールする事が出来ます」
関心する彼。ふと、タケシが、
「なあ、ヒロミ。練習した歌、みんなにも聞かせたいんだけど…」
「いいですよ。少し照れますが」
タケシは、大急ぎで乗り物に行くと、楽器の入れ物を抱えて、みんなの前にやって来た。慣れた手つきで楽器を取り出すと、少し音の調整をして、楽器を弾き始める。
楽器を弾く音が、荒野に響く。そしてタケシが歌い、ヒロミがそれに続く。
折しも、それは別れの歌。だが、希望に満ちた人との別れの歌。聞いている皆からも、歌う二人からも、涙が溢れていた。
二人が歌い終わると、誰ともなく肩を組んで、皆泣いていた。
誰かが言ったか、
「また、会おうな」
を、みんなで繰り返していた。
やがて、腕が離れて、別れの時がやって来た。
先ずは、タケシ。
「また、会おう」
と言うと、風に運ばれて帰って行った。
次は、ナオキ。ナオキは何も言わず、普段通りに微笑んでいた。目にうっすらと涙を浮かべて。
そして、風に運ばれて帰って行った。
最後に、彼の番。
「じゃな」
彼は涙を見せまいと、二人に背を向けた。
優しく風が彼を取り囲み、彼も風に運ばれて帰って行った。
それを見送った二人は、
「僕達も帰りましょう。乗り物は風の町まで持つでしょうから、乗って帰りましょう。いずれはこの乗り物も役に立つでしょう」
シンタロウはうなずくと、ヒロミと二人で、風の町へ帰って行った。
風に運ばれながら、彼は涙を堪えていた。あっという間に彼の町が見えた。
風は町の入り口で止み、彼は着地した。
「長かった旅も、帰りはあっという間か…。
でも、修行やり直して、先ずは打倒タケシだ」
そう決意すると、彼は、町の入り口で深呼吸して、
「ただいま!」
と大きな声で、言うと町へ帰って行った。
風になりたい
届けその胸に
Faith of Love
さらば
恋人よ
Faith of Love
フロンティア・ワールド
Fin
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