本編

39/39
前へ
/42ページ
次へ
「では、皆さんを風の力で、お送りします」 と、ヒロミが言うと、 「風の力って、大丈夫なのか?」 と、彼が聞くと、 「大丈夫です。知恵を貰ったお陰で、風の力をコントロールする事が出来ます」 関心する彼。ふと、タケシが、 「なあ、ヒロミ。練習した歌、みんなにも聞かせたいんだけど…」 「いいですよ。少し照れますが」 タケシは、大急ぎで乗り物に行くと、楽器の入れ物を抱えて、みんなの前にやって来た。慣れた手つきで楽器を取り出すと、少し音の調整をして、楽器を弾き始める。 楽器を弾く音が、荒野に響く。そしてタケシが歌い、ヒロミがそれに続く。 折しも、それは別れの歌。だが、希望に満ちた人との別れの歌。聞いている皆からも、歌う二人からも、涙が溢れていた。 二人が歌い終わると、誰ともなく肩を組んで、皆泣いていた。 誰かが言ったか、 「また、会おうな」 を、みんなで繰り返していた。 やがて、腕が離れて、別れの時がやって来た。 先ずは、タケシ。 「また、会おう」 と言うと、風に運ばれて帰って行った。 次は、ナオキ。ナオキは何も言わず、普段通りに微笑んでいた。目にうっすらと涙を浮かべて。 そして、風に運ばれて帰って行った。 最後に、彼の番。 「じゃな」 彼は涙を見せまいと、二人に背を向けた。 優しく風が彼を取り囲み、彼も風に運ばれて帰って行った。 それを見送った二人は、 「僕達も帰りましょう。乗り物は風の町まで持つでしょうから、乗って帰りましょう。いずれはこの乗り物も役に立つでしょう」 シンタロウはうなずくと、ヒロミと二人で、風の町へ帰って行った。 風に運ばれながら、彼は涙を堪えていた。あっという間に彼の町が見えた。 風は町の入り口で止み、彼は着地した。 「長かった旅も、帰りはあっという間か…。 でも、修行やり直して、先ずは打倒タケシだ」 そう決意すると、彼は、町の入り口で深呼吸して、 「ただいま!」 と大きな声で、言うと町へ帰って行った。 風になりたい 届けその胸に Faith of Love さらば 恋人よ Faith of Love フロンティア・ワールド Fin
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加