本編

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そう言って彼は、まだ痛む体を、起こそうとするが、 「まだ、動いたらダメ。しっかり直そうね」 ナオキは、優しく言う。 不満そうに、ベッドに横になる彼。不意に、 「あー!ナオキの剣を奪おうと奴等はどうした?」 「大丈夫。僕が倒したから」 「そうか…」 二人に、沈黙が訪れる。少しの後、彼は、疑問をナオキにぶつけた。 「なあ、何でナオキの剣が狙われるんだ?」 「僕にも、分からない。自分が、誰なのかも、分からないしね」 「それって…」 「僕は、自分の名前、剣の名前、戦い方しか分からないんだ。それ以外は、全く記憶がない」 ナオキの顔が、少し曇る。彼は、ナオキの言葉に、胸を痛めた。 「だから、蒼冽が唯一の、僕の記憶の手掛かりなんだ」 「うん、そうか…。だったら、尚更だ。そのブラックなんたらって奴、吹っ飛ばして、ナオキの剣を諦めさせようじゃねぇか」 「ユースケ…」 「でよ、それが片付いたら、また戦って今度こそ、決着着けようぜ」 「うん」 「うっしゃあ。そうと決まれば、とっとと怪我治して、ブラック何とかって奴の所行くぞ」 ナオキは、また普段の優しい顔に戻り、 「ご飯、持ってきてあげるね」 そう言って、ナオキは部屋を出た。目に涙を、浮かべながら…。 彼の回復力は、医者も驚く程驚異的で、3日後には、元通りになっていた。 「よっしゃ。これで大丈夫。さあ、次の町に行こうぜ。ブラック何とかの手掛かりが欲しいしな」 「そうだね」 二人が、宿屋の主人に代金を払い、次の町に付いて聞くと、 「次の町へ行くには、大きな砂漠を超えるしかないよ。装備は、充分にした方がいい」 との、アドバイスで、二人は砂漠越えに必要な水と食料、砂嵐に備え、マントを買い、その町を後にした。 町から少し離れると、砂漠が二人の前に広がっていた。 二人とも、生まれてはじめての砂漠。 どこまでも広がる砂の大地に、不安はあったものの、二人は意を決して踏み出した。 だが、予想以上に砂漠は、二人を困難に陥れた。 昼は暑く、夜は寒い。体力の消耗も激しく、足を踏みしめようにも、砂に足が絡み付き、力を無駄に消耗していった。 二人とも、黙って歩いていたが、お互いに限界に近づいているのが、分かっていた。 次の町が見えた…、と思った二人は、限界だった。 砂の上に、二人とも倒れてしまった。 そこへ、一人の男が現れた。image=354746154.jpg
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