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翌日、二人は医者から、生命の水の井戸の場所を聞いて、そこへ向かった。
タケシは、辺りの警戒をしつつ、
「よう。待ってたぜ」
と、余裕を見せる。彼は、
「へっ、その余裕、何時まで、続くか!」
彼は、先手必勝とばかりに、タケシに連続で、蹴りを繰り出す。
が、タケシは腰からウイップを取り出すと、その蹴りを全て弾き返す。
「すげー!俺は何度か、ウイップ使いと戦ったことあるけど、全部跳ね返されたのは、初めてだ」
「そりゃ、どうも」相変わらずの余裕のタケシに彼は、
『ウイップってのは厄介だ。使いこなせば、どんな攻撃も防ぐし、逆に反撃も出来る。なら…』
彼は、タケシの視覚から姿を消し、拳と蹴りを繰り出し、その威力の風に合わせて攻撃するが、風をウイップで相殺すると、彼の拳をウイップで、絡み取る。
「悪いな。捕まえた」
「この程度で、俺が捕まったとでも…」その瞬間、タケシの手から火が吹き出し、ウイップを通して彼の身体を、焼きつくす。
「だから、言ったろ。俺は強いと」
「くそ…」
ウイップが離れ、彼の身体は、地面に倒れる。
ナオキは、彼の元に駆けつける。
「軽く火傷させただけだ。早く医者に見てもらえ」
ナオキは、彼の身体を肩の担ぐと、急いで戻って行った。
ふと、タケシは顔に違和感を感じ、そっと頬を撫でると、薄い切傷から、血が流れていた。
「あいつ…。攻撃を弾いたと思ってたが、こうくるとはな。
俺も、まだまだ精進が足りないな」
タケシは、そう言ったが、遠くからこちらに向かってくる集団に、警戒を強めた。
一方、ナオキは彼を担いで、また医者の家に戻って、彼の治療をお願いしていた。
医者は、棚から大事そうに、瓶を取り出すと、彼の口に一滴瓶から水を落とす。と、全身の火傷はたちまち回復して、彼は意識を取り戻した。
「畜生!負けた!完敗だ!」
それは、彼にとって生まれて初めての、負けだった。
今まで、どんなに無謀とも言える戦いに、勝ってきた彼にとっては、屈辱以外の何物でもなかった。
苦悩する彼に、掛ける言葉もないナオキ。
医者は、大切な瓶を棚に直しながら、
「タケシの一族は、この生命の水を、命懸けで、守って来た。奴には、一族の誇りと、絶対に負けられないと言う、重荷があるのだよ」
二人に、医者の言葉が重く感じる。
彼が、何かを言おうとすると、外から大勢の声と、タケシの悲鳴が、響き渡る。
二人は、急いで生命の水の井戸に向かった。
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