第1象「移動、盲目、猜疑」

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「はぁ。。。」 時は20世紀に入ってまだ数年しか経っていないこの日。 いたって普通に思える世界、悪く言えば何もない世界に とある高校に通っているのは、この俺 柊 幸(ひいらぎ こう)である。 俺は、朝の清々しい景色を見ながら優雅に歩いて登校している。 そのためには、周りのちょっとばかしうるさい喧騒に耳を傾けてしまうのはしばしばで、聞きたくない事まで入ってしまうのが人間の悲しい性という奴だろう。 そしてその俺が所属している高校は南鳥高校って言うんだ。 そこの高校は、周りから見れば比較的真面目な生徒が多い学校と言われていて評判もなかなかいい。 少なくとも俺は真面目なんて似合わないが。 そんなわけで無事学校の校門まで辿り着いた俺は、階段を昇り毎日を過ごすのには慣れた教室に足を踏み入れた。 教室の中はあまりにありふれた光景で様々な人がいるのだと実感できるのが幸いだな。 そして、どうやら俺の学校到着時間はギリギリだったようで、早速チャイムが鳴り担任の先生が教室に入ってくると教室にいた生徒達が一斉に席に着席しSHRが始まったわけだ。 つくづく切り替えが早い奴らだ。 「今日は南鳥高校でも一大イベントとして取り扱っているテスト一斉返却の日だ。 順位も廊下に掲示される。 気になる奴は自由に見に行ってよし。 しかし、誹謗中傷を誘発するような行為は一切禁止とする!」そんな重要事項を叫んでいるのは先生だな。 周りの生徒達は、イベントの影響か浮足立っているのが目に見えて分かる。 それはそうだよな。 誰だってみんなとテストの点数を確かめ合いたいのは学生として当たり前になりつつあるかもしれないのだから。 そして、この南鳥高校に伝わるイベント「テスト一斉返却」は、全体の成績の均衡を保つために行っているものと聞く。 どうやら全学年全クラスで統一してやっている行事みたいだ。 それをするために一日の半分は潰れる事になる。 面倒臭い事この上ないな。 とにかく難しい事は俺には分からん。 ちなみに廊下に掲示された学年別にランク5までに入った生徒には校長直々に賞状がもらえるのだという。 どうやら進学や就職でかなり有利になる推薦の一つの鍵らしく死に物狂いで勉強してこの日を迎える生徒も少なくないらしいな。 頑張って勉強してみろよ~。 まあその一見面白くなさそうな一大イベントの説明は以上だ。
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