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『…正義のヒーロー気取りなの?』
倫は、冷たい視線を向けてそう言った。
『やるって言葉がどんな意味かわかって言ってる?怪我した女の子を火の中に飛び込ませるのが怖いから身代わりになるって意味じゃないのよ?』
俺は黙っていた。
全てを否定できるほど根性据わってないことは、痛いくらいにわかっていた。
『…平家を放っておけばやがて何もかも奪われて壊されてお仕舞いになるわ。なめてかかればそれこそ世界滅亡、あなたも私も、みーんなミンチになって、それで終わりよ。』
『…初耳だぜ、んな恐ろしい事実』
『今初めて教えたもの』
口ではそう言ったものの、心は異常なまでに落ち着いていた。
夢の中みたいだ。
脳みそ以外の全てが、当然の結果だと知っている、そんな感覚。
『でもやるってことは…いい?「誰か」が「やる」ってことは、』
幾億の犠牲を一で代用するって意味なのよ。
早瀬の声は、震えていただろうか。
『あぁ、知ってる』
答えた俺の声は、いつもと違っていただろうか。
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