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「…あんまり時間ないわね」
ありがとう、と言ってお盆を受け取った早瀬は時計をちらりと見てから、俺に向かい側に座るように促した。
いただきます、と形式的に手を合わせる。俺もつられて同じようにした。
「急ぎの用事なのか?」
味噌汁を一口すすったところでなんとなくきいてみた。
「…まぁ、急ぎと言えば急ぎね。時間がないのは事実だし…かぼちゃ好き?あげるわ」
早瀬は食べる手を止めずに返す。意外と品がない。
小鉢ごと寄越されたかぼちゃの煮付けをつまんで口に運ぶ。うん、鉄の作る方がうまいな。
「面倒くさいから単刀直入に言うけど、私イタコなの」
「…イタコ?」
聞きなれない言葉に箸が止まる。
思わず早瀬の方を見ると、鶏の竜田揚を思いっきり頬張っているところだった。咀嚼の間があって、早瀬が説明を付け加える。
「霊能力者。あの世の霊を呼び寄せて会話したり色々する人…一般的な意味では、ね」
「…意味深な言い方だな」
「心理学に乗っ取った会話のテクニックよ」
そう言いながらも早瀬の箸は止まることなく動く。今度は新香漬けを拾い上げぱくりと口に放り込んだ。
「それでまぁ、本題なんだけど…」
しかしその本題とやらを最後まできくことはできなかった。
早瀬が話始めると同時に、爆発音と衝撃波が襲ってきて俺達はみんな同じ方向に吹き飛ばされるようにして倒れた。
午後12:15
府内某所の大学でガス爆発事件が起こった。
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