崩される

4/5
前へ
/9ページ
次へ
父がリビングに入る。母は父の前に立ち、うつむきながら 「おかえり…。」 と言っていた。ごめんなさい、とも言っていたような気もする。 「そんなこと言って許されると思ってるの?」 父が言う。いつもとは違う両親。空気が重い。見てはいけないと思いながらも見てしまう。子供の好奇心は恐ろしい。 「携帯折ってもいいよね?」 「…。」 父は無理矢理母から携帯を奪う。ボキッと携帯が折れる音がする。鉄の塊は2つと細かい部品となって床に落ちる。 父はその後、風呂に向かう。 母はその後、床に落ちた鉄を眺めている。泣いているのかはわからない。 私には今の母が親には見えない。知らない女性だ。可哀想とは思うが、救うことはできない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加