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「…収穫は無かったようですね」
これも、何回目か知れない言葉を私は言う。トワルは横目で私を見ると
「ご想像の通りで」
と言い、大きく煙草を吸って勢いよく吐き出した。
ふと、彼の黒い髪の下にある、片方の金の目を見る。北の辺境が出身の彼の白い肌と、整っているが愛嬌を感じさせる顔立ちに、右の黒い目とともによく映えていた。
しかし、いつもは穏やかな太い眉は、今は苛立ちに歪んでいる。
話しかけないほうがいいだろう。トワルから視線を外し、黙って思案する。
考えることも特に無かったので、頭の中で簡単に今回請け負った事件について整理することにした。
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