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私は軽く息を吸い、出す。ふわりと白い固まりが、私の口から吐き出された。
一カ月半前、貴族の次男が額を撃ち抜かれるという、無惨な殺され方で死体が下水道から発見された。
初めは貴族に恨みを持つ人間によるものかと思われたが、しかし恨みを持つ人間に当たっていっても犯人は特定できなかった。
無差別殺人も疑ったが、わざわざ家に居たのを下水道に連れ込んでいるところからして、手間がかかりすぎている。可能性としては低い。
どこから見ても犯人像がつかめない上に、家から連れ出した手口もわからない。
貴族の家の使用人が手引きしたかと思ったが、その日は全員が出払っていた。
そうこうしている間に、二人目が出る。同じ手口で、今度は農民だった。続いて三人目軍人、四人目鍛冶職人、五人目は巫女見習い、そして今回が六人目で、浮浪者。
見事なまでに、バラバラだった。
解決の糸口が見えない、クレロ連続殺人事件―一人目の被害者の名前にちなむ―は、半ば押しつけられるようにして、私が隊長を勤めるルラフ小隊に回ってきたわけである。
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