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一度階級が下がると、なかなか元に戻ることは叶わない。ましてや、それ以上の階級になることは夢のまた夢だ。だから、下がるのは困る。
私は憂鬱を吐き出したくて、ため息をついた。
「ため息なんてついてる暇は、もう無いぜ。どうする、ウルア?」
トワルが煙草の火を消しながら言った。
事件の解決を任務として与えられ、もし解決出来なかったとしたら、責任を背負わされるのは隊長格だ。トワルが私のことを心配してくれているのは、重々承知している。
しかし、なんの手掛かりもヒントも皆無の私には、彼の問いに対して、押し黙ることしか出来ない。
再び沈黙が二人の間を漂うと、トワルがもたれかかるのをやめて、バイクにまたがった。くるりと私を振り返る。
「帰ろうぜ…。乗れよ、隊長殿」
トワルが少しおどけた口調で私に言った。私は軽く頷くと、風でとばされないよう厚手の帽子を深くかぶり直し、バイクの後部座席に跨る。
トワルがハンドルを強く握った。その途端、バイクが大きく唸りを上げる。そして何度かエンジンをふかしたあと、私に「落ちるなよ」と言い、滑り出すように走り出した。
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