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「…っはあ、はぁ。ふー!やっと追い付いたぜ。ったく、二人共早過ぎだっつーの」
あれから半刻程、三人は男を追い町外れの林の中まで来ていた。しかし、生憎の天気で林の中は薄暗く、生い茂った木々が邪魔をし男を見失ってしまった。
「っち。原田のせいで逃げられちまったじゃねーかよ。」
土方が眉間に皺を寄せ呟く。
「ところでよぉ、俺達どっちから来たか覚えてるかぁ?」
「おいおい、遭難なんて笑えねぇよ!」
永倉が辺りを見渡しながら言うと、原田が汗をダラダラと流しながら叫んだ。
「どーやら俺達ぁ、迷っちまったみてぇだな。こんな天気だ、いつ雨が降るか分からねぇ。早いとこ町に出よぉぜ。」
―――ポツ、ポツ
「…ん?」
土方が雨の心配をすると同時に、空から雫が落ちて来た。
「マジで降って来たな。」
「はあっ!?どーすんだよ!?」
「取り敢えず、原田うるせえ。新八、雨宿り出来る所を探しつつ町の方向を探るぞ。」
土方の提案に永倉は頷き、二人は歩きだした。
「って、おい!また俺を置いていくつもりかあぁっ!」
騒ぐ原田を置いて。
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