偶然─ひつぜん─

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騒々し喧騒の中、 青年は人の流れにのまれないように大通りのなるべくはしに陣取りその光景を眺めていた。 じりじりと肌を焦がすような勢いで照る日差しの中でも、 此所はたくさんの人々であふれていた。 此所は、クロスラウ。 他国とは独立してはいるが、 ほぼすべての国々と貿易をし、 他国と他国との貿易には仲介役として商品である物資の金額の決定や、 一時品物の補完なども行っている貿易に特化した独立国である。 たくさんの物資が行き来するため、 商人達がこの国の人口の大多数を占めており、 商人達が仕入れたもの目当てで、 他国から来るたくさんの人々で賑わうため、 様々な文化、様々な人種が行き来する。 これだけの人間が居れば、 悪事を働く輩も少なくはない。 その青年はそんな輩を取り締まる自警団に所属している自警団員だった。 「ようギル。何仕事サボッテンだよ」 青年の名前はギル。 からだは大きい方ではないが、 引き締まった筋肉からは、 確かに自警団員として恥じぬからだつきをしていた。 「なんだ、サイルか。なに少し休憩だ。少ししたらまたパトロールを再開するさ。」 サイルは疑いの眼差しを向けてくるがギルは無視して視線を戻した。 「よくこんなにも騒げるもんだ。」 「戦争してるってのによ。」
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