237人が本棚に入れています
本棚に追加
狼は俺の目の前で立ち止まると、その場にちょこんと座った。
目線の高さがほぼ同じになり、深紅の瞳と目が合う。
上質なルビーの様な瞳に、恐怖を忘れて魅入られてしまう。
いつまで狼と見つめ合っていたのだろうか――。
狼がピクリと身動ぎをした。
「……っ!」
次の瞬間、俺は狼に押し倒されていた。
狼は力が強く、押しのけることが出来ない。
(……もしかして、俺ヤバイ?)
このまま喉笛に噛みつかれたら、俺の人生終わるな……。
狼が舌を伸ばして、ペロリと首筋を舐めてくる。
生温かい舌に、背筋がゾクゾクしてくる。
(……どうしよう。このまま噛みつかれたら)
絶対絶命の危機に、俺は目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!