†月下の花嫁†

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狼は俺の目の前で立ち止まると、その場にちょこんと座った。 目線の高さがほぼ同じになり、深紅の瞳と目が合う。 上質なルビーの様な瞳に、恐怖を忘れて魅入られてしまう。 いつまで狼と見つめ合っていたのだろうか――。 狼がピクリと身動ぎをした。 「……っ!」 次の瞬間、俺は狼に押し倒されていた。 狼は力が強く、押しのけることが出来ない。 (……もしかして、俺ヤバイ?) このまま喉笛に噛みつかれたら、俺の人生終わるな……。 狼が舌を伸ばして、ペロリと首筋を舐めてくる。 生温かい舌に、背筋がゾクゾクしてくる。 (……どうしよう。このまま噛みつかれたら) 絶対絶命の危機に、俺は目を閉じた。
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