†月下の花嫁†

4/5
前へ
/15ページ
次へ
「……今回の花嫁は奥ゆかしいな」 「……!?」 突然耳障りのいい低い声が聞こえて、ビクッとして目を開ける。 (どこから声が?) 周りを見渡しても、目の前の狼以外は何もいない。 (……もしかして、空耳か?) それとも恐怖で、現実逃避したとか……? いまいち判断出来ず呆然としていると、笑い声が聞こえた。 「何をキョロキョロしているのだ?我が花嫁」 「はぁ!?」 覆い被さっていた狼が、可笑しそうに唇を歪めた。 (お……、狼が喋ったぁ!?) 驚き過ぎて、とっさに声が出ない。 でも……、 「狼って、日本語話せたっけ?」 「わはははは!お前は面白いな。それは今、訊くことか?」 狼は腹を抱えて笑い出した。 確かにそうかもしれないが、そんなに笑うことはないと思う。 正直、狼に馬鹿にされたようで面白くない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

237人が本棚に入れています
本棚に追加