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「それに花嫁って何?」
殺されるかもしれないという恐怖から解放されると、次は違うことが気になってくる。
(……ただの聞き間違えだよな?)
俺が男(牡?)の花嫁なんてありえないし、それ以前に相手は人間ですらない。
「何って?そのままの意味だが?我が花嫁」
「…………は?」
俺は意味がわからず、狼の深紅の瞳を見つめた。
「……俺、男だけど?」
「そんなことは見ればわかる」
まさかとは思うが女に間違われたのかと思って訊いてみたが、狼はあっさり俺の言葉を肯定した。
「……普通、花嫁って女だよな?」
「この世界にその様な概念はない。花嫁に性別は関係ない」
「マジで!?」
俺はあまりのことに、大声で叫んでしまった。
「……それに、お前には証があるしな」
「証?」
「そう。お前がしている指輪。――それを持つ者が我が花嫁になる」
狼は器用に前足で、俺の左手を指した。
「……指輪」
俺はいつの間にか、違和感のなくなっていた指輪を恐る恐る見つめた。
(やっぱり、これは呪いの指輪じゃないか!!)
男との結婚指輪なんて一瞬でもつけていたくなくて、俺は必死で指輪を外そうと試みた。
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