†月下の花嫁†

5/5
前へ
/15ページ
次へ
「それに花嫁って何?」 殺されるかもしれないという恐怖から解放されると、次は違うことが気になってくる。 (……ただの聞き間違えだよな?) 俺が男(牡?)の花嫁なんてありえないし、それ以前に相手は人間ですらない。 「何って?そのままの意味だが?我が花嫁」 「…………は?」 俺は意味がわからず、狼の深紅の瞳を見つめた。 「……俺、男だけど?」 「そんなことは見ればわかる」 まさかとは思うが女に間違われたのかと思って訊いてみたが、狼はあっさり俺の言葉を肯定した。 「……普通、花嫁って女だよな?」 「この世界にその様な概念はない。花嫁に性別は関係ない」 「マジで!?」 俺はあまりのことに、大声で叫んでしまった。 「……それに、お前には証があるしな」 「証?」 「そう。お前がしている指輪。――それを持つ者が我が花嫁になる」 狼は器用に前足で、俺の左手を指した。 「……指輪」 俺はいつの間にか、違和感のなくなっていた指輪を恐る恐る見つめた。 (やっぱり、これは呪いの指輪じゃないか!!) 男との結婚指輪なんて一瞬でもつけていたくなくて、俺は必死で指輪を外そうと試みた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

237人が本棚に入れています
本棚に追加