†序章†

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「どうかなさいましたか?……長(おさ)よ」 「何故、その様なことを訊く?」 長と呼ばれた男は、傾けていた杯から顔を上げた。 腰を覆うほどの銀髪が、月の光を浴びて輝いている。 男は深紅の瞳を面白そうに細めた。 そうすると近寄りがたさを感じるほどの美貌が、少し和らいだ。 「長がいつもより楽しそうなので」 「……そうか?」 男はふっと唇に笑みを浮かべる。 「……が、見つかりそうなんだよ」 「は?」 側近の男が首を傾げた。 「聞こえなかったか?……まぁ、よい。いずれ刻が来ればわかる」 「はっ」 側近はそれ以上追及せず、男の足元に跪いた。
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