闖入者、それは少女。

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何でもない日曜日の昼下がり。 春休みでも部活はあるが、日曜日は原則として部活も休みだ。 ゆかりはラウンジのソファに深く腰掛けてファッション雑誌を読んでいた。 今日は珍しくラウンジに寮メンバーが全員集合している。 特に召集をかけたわけでもない。 現にそれぞれ思い思いの休日の過ごし方を満喫しているようだ。 順平に至っては長ソファに横になってぐーすか惰眠を貪っている。 自分の部屋で寝ればいいのに。 風花とアイギスは何やら機械部品らしきものをかちゃかちゃいわせている。 天田はゆかりと同じく読書だ。とはいえ漫画ではあるのだけど。 春の暖かな日射しの下に出て行こうという者は誰もいないようだった。 全く酷い引きこもり集団である。 ――こんこん。 そんな時である。 巖戸台分寮の扉が叩かれたのは。 「?」 ゆかりは不思議に思った。 自分たち以外に寮を訪れる者は滅多にない。 もしや寮から引っ越していった先輩たちが来てくれたのだろうか? 「……!」 それとも……『彼』が? 風花とアイギス、それに天田も同じ考えだったようで四人で顔を見合わせる。 順平だけが呑気そうな顔をして鼾をかいている。 扉がゆっくりと開かれる。 少しだけ開いた扉の隙間から顔を覗かせたのは……少女だった。 「し、しつれいしまスっ!」 そう言って少女は僅かな扉の隙間から器用に身体を滑り込ませ寮の中に入った。 白に近いような輝くプラチナブロンド。金色の瞳は爛々と光っている。 しかしその表情はどこか深刻そうに陰っていた。 細身の小さな身体を一生懸命動かしながら少女は勝手に話し続ける。 「大変なんでス!大変なんでス!学校が、学校が、変なもやもやにーっ!ああっ、怖いでス!あんな怖い学校行きたくないでスよぉ!ここにくれば安心だって言われたから来ましたケド、アタシはどーしたらいいんですカーっ!?なんか不安になってきましたヨォ……。ふわぁぁああん、ぐすっ、ふぅあぁぁあああん!」 いきなり感情の爆発を見せた少女にゆかりを含め寮のメンバーは終始唖然である。 順平は少女が叫んだあたりで飛び起きてそのままソファから落下していた。 「ちょ、ちょっと!あなたは誰!?どういうこと!?」 寮メンバーの総意をゆかりが口にする。
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