7人が本棚に入れています
本棚に追加
やはりというかなんというか、見に行きたい気持ちが勝る。
奇怪な現象に、次があるとは言いきれないのだから。
「何でそんなに悩むのさ。料理なんていつでもできるでしょ」
行け。と里咲は掌を上下にひらひらと振る。
「ありがとう。じゃあ…行って来るね」
桜良の表情が明るくなり、やわらかな笑顔が広がった。
しかし、今の桜良はパジャマ姿だ。
さすがにパジャマで外に出ることはせず、クローゼットからフレンチコートを羽織る。
天海学園は制服だ。
中等部は学ランとセーラー服。高等部は紺のブレザー。
女子のスカートは下に太く白い線が入っている。
男子はネクタイ、女子はリボンの色が三年は濃緑、二年は濃青、一年は濃赤と色分けされているのだ。
だが今、制服に着替えるにはさすがに早すぎるだろう。
「行ってきます」
すでに桜良の顔には笑顔はなかったが、嬉しそうな雰囲気が体全体から見て取れた。
「いってらっしゃい」
桜良が出ていった後、残された里咲は窓に手を付いて呟いた。
「久し振りに見たなぁ…。桜良の笑顔」
桜良は感情が乏しい。
それがあのような笑顔になるほど嬉しがったのはなぜか。
.
最初のコメントを投稿しよう!