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寮と学園を結ぶ道の長さは100メートルほど。幅は人が五人並んでも余裕である。
桜良は誰もいないその通りをゆっくり歩いていた。
天海学園への通りに咲く桜並木の桜は、有名なソメイヨシノではなく、鮮やかなピンクの八重桜だ。
そのため、雪の白さをさらに引き立てている。
なぜ八重桜かといえば、この学園創立者の
『普通の桜ってピンクじゃないよねぇ。むしろ白? 綺麗なピンクにしたいなぁ』
というなんとも我儘な発言からきているらしい。
「きれい…」
桜と雪は少しずつ降り積もり、地面を斑の絨毯に変えていた。
「桃源郷ってこんな感じかしら。里咲に感謝しなきゃ」
創立者のふざけた名案にも、心のなかでひっそりと感謝する。
あとしばらくすれば、通学する生徒も出てくるだろう。
その前に、桜良には行っておきたい場所があった。
図書館。
この学園は図書館でさえ変わっている。
高等部と中等部の各校舎内に十五万冊以上の蔵書数を誇る図書館があるのだが、もう一つ別館と名の付く図書館が存在しているのだ。
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