1st Story

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図書館はコの字型の二階建て。 校舎と同じく煉瓦造りの洋館風のもので、高等部と中等部の間に壁のごとくそびえている。 校舎の外にあるからか、あまり使われないその図書館の庭。 コの字の中に大きな桜の木がある。 並木道と同じ八重桜。 それが桜良の目指す場所なのだ。 校門のゲートは既に開いていた。 まだ六時を過ぎたばかりのはずだが、熱心な教員でも来ているのだろうか。 桜良は誰かいないかと緊張しながら、周りを見渡して足早に門をくぐった。 校舎の奥に行くと左側に桜の木が見えてきた。 まるで、夜中の学校に忍び込んだようだった緊張感と不安感が一気に消え、桜良は桜の元に歩いていく。 木の幹は子供一人が隠れてしまいそうに太く、高さは建物三階を越えるほど。 樹齢百歳は越えていそうな老樹だ。 桜の木全体が見える場所で立ち止まり、呟く。 「やっぱりここか一番…」 が、しかし呟きは最後まで零れる事はなかった。 .
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