7人が本棚に入れています
本棚に追加
図書館はコの字型の二階建て。
校舎と同じく煉瓦造りの洋館風のもので、高等部と中等部の間に壁のごとくそびえている。
校舎の外にあるからか、あまり使われないその図書館の庭。
コの字の中に大きな桜の木がある。
並木道と同じ八重桜。
それが桜良の目指す場所なのだ。
校門のゲートは既に開いていた。
まだ六時を過ぎたばかりのはずだが、熱心な教員でも来ているのだろうか。
桜良は誰かいないかと緊張しながら、周りを見渡して足早に門をくぐった。
校舎の奥に行くと左側に桜の木が見えてきた。
まるで、夜中の学校に忍び込んだようだった緊張感と不安感が一気に消え、桜良は桜の元に歩いていく。
木の幹は子供一人が隠れてしまいそうに太く、高さは建物三階を越えるほど。
樹齢百歳は越えていそうな老樹だ。
桜の木全体が見える場所で立ち止まり、呟く。
「やっぱりここか一番…」
が、しかし呟きは最後まで零れる事はなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!