7人が本棚に入れています
本棚に追加
桜良もまさか、木から人が落ちてくるとは思うはずもない。
とても。かなり。ものすごく驚いた。
しかし、少年が桜良の分まで驚きを吸収したかのようで、逆に冷静になれた。
もっとも、表情が動かない桜良だ。
里咲でなければそこに驚きの変化は読み取れなかっただろうが。
「いたた…。うぅ、大丈夫」
そう言いながら顔を上げた少年は、落ちた所を見られた恥ずかしさからか、若干頬が朱色に染まっている。クリッとした丸い目は痛みを堪えて潤み、子供っぽさに拍車をかけていた。
「こんな時間になにしてるの?」
桜良はいまだに頭をさすっている少年に尋ねた。
この際、自分の事は棚に上げておく。
「えっ? えーっと…」
少年の顔が僅かに引き吊るのがわかった。
怒られるとでも思ったのだろうか。
.
最初のコメントを投稿しよう!