1st Story

16/21
前へ
/87ページ
次へ
桜良もまさか、木から人が落ちてくるとは思うはずもない。 とても。かなり。ものすごく驚いた。 しかし、少年が桜良の分まで驚きを吸収したかのようで、逆に冷静になれた。 もっとも、表情が動かない桜良だ。 里咲でなければそこに驚きの変化は読み取れなかっただろうが。 「いたた…。うぅ、大丈夫」 そう言いながら顔を上げた少年は、落ちた所を見られた恥ずかしさからか、若干頬が朱色に染まっている。クリッとした丸い目は痛みを堪えて潤み、子供っぽさに拍車をかけていた。 「こんな時間になにしてるの?」 桜良はいまだに頭をさすっている少年に尋ねた。 この際、自分の事は棚に上げておく。 「えっ? えーっと…」 少年の顔が僅かに引き吊るのがわかった。 怒られるとでも思ったのだろうか。 .
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加