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桜良はそれ以上追求することはせず、空を仰ぎ見る。
「雪が止みそう…」
桜の花びらは止まる事なく散っているが、雪はもう細かく、チラチラとしか舞っていない。
「ああっ! 歌を…っ」
桜良の言葉に少年は弾かれたように声を上げたが、すぐに息を呑み、口を手で押さえてしまった。
明らかな“まずい事言っちゃった”の反応だった。
「歌…。 あの歌は『ゆき』の替え歌?」
少年が歌っていたのだろうと尋ねれば、コクリと首を縦に振られた。
「でも替え歌じゃないよ。あれは一番の歌」
動揺はどこへいったのか。少年はにっこりと笑顔で小首を傾げる。
「『ゆき』は、犬と猫が出てくる歌詞だけだと思っていたけど、違うのね」
「あっちが有名だよね。でもあの歌詞は二番だよ」
子供の頃から耳にしてきた歌だが、知らない歌詞があったとは驚きだ。
まあ、自分が無知なだけなのかもしれないが。
軽いショックで一人、思考の中に入っていた桜良は、少年の声で我に返った。
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