1st Story

18/21
前へ
/87ページ
次へ
―――ゆーきやこんこ あられやこんこー ―――ふってもふっても まだふりやまぬー ―――いーぬはよろこび にわかけまわりー ―――ねーこはこたつで まるくなるー けして大声ではない。けれども、優しく響く歌声だ。 「不思議…。あなたが雪を降らせたみたい」 桜良は思わず呟いた。 事実、止みそうだった雪は、今また大粒になってきている。 まるで歌声に導かれたかのように。 「え……?」 言われた少年は、虚をつかれたようにぽかんとする。 変なことを言ってしまったか。 桜良が、気にしないで。と言おうとした時、桜の木の後ろに人影が見えた。 しかも、こちらに近づいてくる。 「あ、のっ! どうして」 「人が来るみたい。私はもう行くわ。あなたも早く帰ったほうが良いわよ」 長く居すぎたか。 教師に見つかれば、何を言われるかわかったものではない。 少年の話を聞かなかったことを、申し訳なく思いながら、桜良は足早に校舎を後にした。 .
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加