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―――ゆーきやこんこ あられやこんこー
―――ふってもふっても まだふりやまぬー
―――いーぬはよろこび にわかけまわりー
―――ねーこはこたつで まるくなるー
けして大声ではない。けれども、優しく響く歌声だ。
「不思議…。あなたが雪を降らせたみたい」
桜良は思わず呟いた。
事実、止みそうだった雪は、今また大粒になってきている。
まるで歌声に導かれたかのように。
「え……?」
言われた少年は、虚をつかれたようにぽかんとする。
変なことを言ってしまったか。
桜良が、気にしないで。と言おうとした時、桜の木の後ろに人影が見えた。
しかも、こちらに近づいてくる。
「あ、のっ! どうして」
「人が来るみたい。私はもう行くわ。あなたも早く帰ったほうが良いわよ」
長く居すぎたか。
教師に見つかれば、何を言われるかわかったものではない。
少年の話を聞かなかったことを、申し訳なく思いながら、桜良は足早に校舎を後にした。
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