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少年は桜良が去って行くのを呆然と見つめていた。
「日本人形みたいで綺麗な女の子だなぁ」
と口にして、ハッと首を横に振る。
「…僕はなに言ってるんだ! 違う~! 違うよ!」
「何が違うんだよ? セツ」
一人で騒ぐ少年の背後からいきなり声がかかった。
しかし、桜良の時とは違い、少年は驚くことなく後ろを向く。
聞き慣れた声だからだ。
「ヒノ!」
ヒノと呼ばれたのは端整な顔立ちの青年で、赤茶の髪は少し長め。
上下とも薄い水色のジャージを軽く着崩している。
少年とは違い、背もすらりと高い。
どうやら桜良が見た人影はこの青年だったようだ。
「おい、あれは確か…」
青年は少年からすぐに目をそらし、小さくなっていく桜良の後ろ姿を指す。
その瞬間。
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