1st Story

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カーテンが引かれた薄暗い部屋。 暗闇でないのは、朝の光が窓の外に溢れているからだろう。 ここは天海学園(てんかいがくえん)の寮。 四角く広い部屋の中、左右の壁に備え付けられたベッドからは、規則正しい寝息が聞こえてくる。 その上方には机。下方にはクローゼットが、これらも左右同じように置かれていた。 どうやら二人部屋のようだ。 机の間。丁度真ん中にあるテレビから少し離れたところには、カラフルな座椅子が二対、小さなテーブルを挟んである。 さらにクッションとぬいぐるみが数個程、あちらこちらに散らばっているところを見ると、女の子の部屋らしい。 ふと、窓側のベッドに動きがあった。 ゆっくりと布団から起き上がったのは、年頃十五、六歳ほどの少女だ。 背中までとどく長い黒髪。切れ長の目の整った顔は日本人形のようである。 彼女の名前は滝沢桜良(たきざわおうら)。 今年天海学園高等部に入ったばかりだ。 .
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