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小さな村に少女が一人立っていた。
年頃は10になるかならないか。
「お母さん、どこ行くの?
お母さんとおでかけひさしぶりだねっ」
少女はスキップをしながら母の周りをぐるぐるとまわったり、母の手を取り左右に振りながら楽しそうに歩いている。
「行けばわかるわ」
「ふぅん?楽しみっ」
少女は母の顔を見上げ、満面の笑みで言った。
そしてすぐ興味が他へ行き、母から視線を外した。
少女は自分の言葉のせいで、母の表情が曇ったことに気付くことはなかった。
母と手を繋ぎおでかけ―――
少女にはこのことが何よりも嬉しく、幸せだった。
この日のために母が買ってくれた靴は、赤くてピカピカしていて、小さな白い花がついている。
少女は、それをはいた自分が少し大人になった気分になった。
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