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その男の名は、秦(シン)という。
彼は誰かに命令されているのか、毎日私の所に食事を運んでくれている。
食事を運んでくるだけではなく、ひまな私の話し相手になってくれたりする。
最初の頃、私は彼を嫌い一言も話さなかった。
それでも変わらず私に笑顔を向けてくれる彼に、私は少しずつ歩み寄るようになっていた。
「最近梅雨入りして、雨の音が激しいから、眠れないの?」
私は彼の言葉に答えず、視線を窓に向けた。
「最近ほとんど食事してくれてないけど、大丈夫?具合が悪いの?」
「食べたくないだけよ」
私がぶっきらぼうに答えると、秦は少し困った顔をして小さなため息をついた。
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