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私には、何が起きたのかよくわからなかった。
でも、先ほど男が手にしていた物が、今度は真っ赤に染まっていた。
驚いて秦を見ると、倒れた秦の体から、次々と血が吹き出しているのが見えた。
「秦っ!!!」
私が悲鳴にも似た叫び声を上げると、男は私の方を向いた。
男の目には、秦の様な優しい光などなく、ただ澱んだ空の様な色をしていた。
「お前は殺さないでやるよ。どうせそのカゴから出られやしないし、出れた所で助けなんて呼べないだろうからな」
男の嫌な笑い声が、部屋の中をこだましていた。
「秦、秦っ!! 大丈夫? しっかりして!!」
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