出張

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 今日の最高気温は三十度を超えていただろう。七月に入って、やや日が詰まったものの、夏の夕空は、しばらく明るかった。そして暑かった。  商談を順調に終えて、そのまま電車に飛び乗れば、帰れないこともなかったが、隆は泊まろうと決めた。  酒場の彼女に……美香に会いたいと、ふと思ったからだ。  隆が、その店に入ったのは三度目だった。  スナック『待ち角』は駅から三本目の小路の角にあった。  最初は半年前に上司と共に出張で来て、上司に連れられて入った。
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