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―それから12年後―
季節は春真っ盛り。
俺は、待ち合わせのオープンカフェに向かって歩いていた。
綺麗な満開の桜が咲き誇る並木道の中、木漏れ日が漏れる道を、小さな男の子の手を引いて……。
その待ち合わせのカフェには、一組の親子が待っている筈だ。
待ち合わせの相手は、もう三十代半ばの女性で、娘と一緒にって言ってたな。
……確か6歳。
…おっ!‥あれだな!…
俺は、聞いていた店の名前と同じ名前の看板を見つけた。
「あそこのお店に入るぞ」
俺は、手を引いて歩く我が息子にそう声を掛ける。
すると、
「わかったー♪」
そう言って、息子は俺の手を振りほどいて店に駆け出していった。
目を細めて、その後ろ姿を見送った俺は、
!!!!!!
店の入口で、息子が1人の小さな女の子とぶつかっている姿が目に入った。
その後ろから、懐かしい顔の女性が現れた。
「おぉ、アナ♪
‥ひっさしぶりだなぁ‥‥」
「遅いわよ!‥何分待ったと思ってんの?」
「悪ぃ、悪ぃ‥久しぶりの東京で道に迷っちゃってさ‥」
軽く手を挙げて謝る俺‥八雲。
女の子を抱き起こす女性は愛奈だった。
「いつ、こっちに戻ってきたの?」
娘を抱き起こしながら、愛奈が八雲に聞いた。
「先月の末だよ。
もうすぐ、こいつの一学期が始まるから、その前にバタバタ手続きを済ませなきゃって思ってさ。」
倒れてすぐに起き上がった息子に目をやりながら、俺はそう言った。
「何年生になるの?」
愛奈が息子に質問する。
「今度、三年生になります。」
息子は、はっきりとした口調で答える。
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