八雲 奇跡を見る

2/12
前へ
/754ページ
次へ
   ―それから12年後― 季節は春真っ盛り。 俺は、待ち合わせのオープンカフェに向かって歩いていた。 綺麗な満開の桜が咲き誇る並木道の中、木漏れ日が漏れる道を、小さな男の子の手を引いて……。 その待ち合わせのカフェには、一組の親子が待っている筈だ。 待ち合わせの相手は、もう三十代半ばの女性で、娘と一緒にって言ってたな。 ……確か6歳。 …おっ!‥あれだな!… 俺は、聞いていた店の名前と同じ名前の看板を見つけた。 「あそこのお店に入るぞ」 俺は、手を引いて歩く我が息子にそう声を掛ける。 すると、 「わかったー♪」 そう言って、息子は俺の手を振りほどいて店に駆け出していった。 目を細めて、その後ろ姿を見送った俺は、 !!!!!! 店の入口で、息子が1人の小さな女の子とぶつかっている姿が目に入った。 その後ろから、懐かしい顔の女性が現れた。 「おぉ、アナ♪ ‥ひっさしぶりだなぁ‥‥」 「遅いわよ!‥何分待ったと思ってんの?」 「悪ぃ、悪ぃ‥久しぶりの東京で道に迷っちゃってさ‥」 軽く手を挙げて謝る俺‥八雲。 女の子を抱き起こす女性は愛奈だった。 「いつ、こっちに戻ってきたの?」 娘を抱き起こしながら、愛奈が八雲に聞いた。 「先月の末だよ。 もうすぐ、こいつの一学期が始まるから、その前にバタバタ手続きを済ませなきゃって思ってさ。」 倒れてすぐに起き上がった息子に目をやりながら、俺はそう言った。 「何年生になるの?」 愛奈が息子に質問する。 「今度、三年生になります。」 息子は、はっきりとした口調で答える。 .
/754ページ

最初のコメントを投稿しよう!

297人が本棚に入れています
本棚に追加