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茶番みたいな言葉を心の中で並べていると錠子がのそのそ日記を書いていた。
一切の乱れの無い姿勢を見ると大人びているように感じるが表情は子供そのものだ。
希薄な人間関係に倦んだ彼女はまだ幼いうち笑顔で慇懃に人間を拒絶する術を身につけていて、その分人間らしい感情は幼さを残したままなのだ。
今でさえ、人間らしい感情を見せるのは個として認識できる私だけ。
兄に対しても丁寧な言葉と所作で拒絶を示した時は背筋が寒くなったものだ。
私と一緒にいる時と違いすぎる、と。
「書けた?」
尋ねてみる。まだー、と間延びした返事が寄越される。
私は大人しく暇を持て余す。
指を絡ませて一人手遊びしてみたり。
かえるー、と昔誰かに習った形を作った。
確かに、蛙と言われれば蛙だ。
古池や、と言いたくなってくるが錠子の邪魔をしてはいけないので我慢する。
ああ、暇だ。
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