錠子日記。いっさつめ

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そんなダメダメな関係の私達。 私は学校から帰ってくるとすぐ錠子の側に侍る。 本当は錠子様、と呼ばなければならなかったのだが、錠子が嫌がり、錠子の兄であり九条家当主である上恭さんの許可により呼び捨てに落ち着いた。 シスコンな上恭さんだった。正直引く。 錠子が私以外を侍らせたがらない為、私はずっと錠子についている形になり、イコール食事も錠子と同じく上げ膳下げ膳になってしまう。 そこに同じ使用人として苛々してしまう人がいて、私はいつものようにお決まりのようにその人達に不満をぶちまけられたりする。 今の状況も、そういう事で。 錠子の部屋に行く途中、感慨なく廊下を渡っているとすれ違った女中さんに庭に突き飛ばされた。正直痛い。 というか、庭の石が乱れてその分庭師さんにいびられるのでやめてほしい。 その場で泥を払って傷を確認。 右肘に擦り傷一つと、左手のひらに擦過傷。右肘のほうは血がもう滲んでいる。冬服なので非常に困った。血は落ちにくい。 錠子の部屋に行くのが遅れてはいけないので、急いで廊下に戻り急ぎ足。減給は困る。 痛いとかよりも、お金のほうが気になる当たり、私もあの家の娘なんだなぁとか思ってみたり。 本当に、馬鹿みたいだ。 私を突き飛ばした女中さんも、ぼけっと突き飛ばされた私も、私に依存する錠子も、そんな錠子を溺愛する上恭さんも、誰もかも。何もかもが。 馬鹿、みたいだ。
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