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錠子の部屋に入ると最初怪我を心配されたが、いつもの事だと言えば納得した。
賢すぎる程賢いのだが、如何せん箱入りな為騙されやすい。私の度々の怪我も転びやすいから、という説明で納得してくれた。
実に他愛ない。
私はパソコンに向かい合う錠子の後ろ姿をぼんやり眺めた。
錠子は依存は依存でも相手が側にいれば何をしていても気にしないタイプだ。逆に言えば、依存している人間を放って自分の好きな事をする。
最近はパソコンでのネットゲームにハマっているらしく、こしょこしょやっている。
ネットゲームなら人間の区別が付いているのかと思えばあにはからん、普通のゲーム、つまり全員NPCだと認識してやっているそうだ。曰く、
「人間って私とたかとあれしかいないのに、これだけのキャラクターを動かせる筈はないよ?」
当然のように言いやがった。
流石としか言い様が無い。
ゲームだと、相手が個の人間だと認識してるが故に本などで培った心理学を駆使してそこそこ上手くやっているらしい。
まるで、何かの暗示に掛けられているかのように錠子は世界には三人の人間しかいないと思い込んでいる。錯覚している。
本当はそうなのかもしれない。
世界には、私と錠子と一人がいて。その一人は何人ものフリをしているのかもしれない。
たまに、そんな馬鹿げた事を考えてしまう自分がいる。
もうちょっと有意義な事に頭を使おう。
昨日、三条家の人間が殺された話とか。
最近、四十五条家を狙った犯罪が後を絶たない。
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