錠子日記。いっさつめ

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私は、ゆっくりと瞼を押し広げた。 見慣れた品の良い木材の天井が目に入る。 ややぼやけた視界を回復させるために、意識的に瞬きを何度か。 鮮明になった視界で寝転がったまま横を窺うと警戒心ゼロの寝姿が目に入る。 男性が見れば役得なのだろう、寝巻きとしている薄い生地(と言っても私の普段着の十倍はするだろう)の浴衣はあまりよろしくない寝相のせいで乱れ、足のほうに至っては殆ど丸出しになってしまっている。 やたら長くすらりと伸びた足に若干殺意がわきかける。私の身長はお世辞にも高いほうではない。精神的にはかなり優位に立っていると思うだけに、この身長差はいかんともしがたいものがあった。 まぁ、そんな事で張り合っても意味の無い相手でもあるが。 私も、まだまだ若いと言う事か。 そんな風に自嘲して、布団からはみ出す茶色の注連縄めいたものをつまみ上げる。 どちらかと言えば栗毛っぽい長い髪を一本の三つ編みにしているため、どことなく猫の尻尾を思わせる。 本人を毎日観察している者としては彼女はどちらかと言えば犬だと思うのだけれど。
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