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老人はうつ伏せで倒れている。表情はこちらから伺う事ができない。とりあえずカヨは木の枝でつついてみる事にした。
ツンツン……、ブス!!
「うぎやああぁ、足があぁぁぁ!」
「わり、間違って刺しちったわ」
つついたつもりだったのだが、勢い余って刺してしまったようだ。老人はカヨに向き直って問い掛ける。
「何なんじゃあんたは!」
「いやね、あんたがここに倒れてたから死んでるかどうか試してみたんだよ。……まあ木の枝刺さったおかげで目覚ましたんだから結果オーライ?」
「オーライ? じゃないわ! 最近のガキはみんなこうなのかい!?」
老人は相当怒っているようで、座った状態のまま杖をブンブン振り回してカヨに説教する。
「悪い悪い。村までおぶってやるから許してよ、な?」
カヨはそう言って老人に近づいた。
「そういやアンタ、カヨとか言う少女を知らないかね? 多分この近くの村に居るはずじゃが」
「何ジジイ? 私に用あんの?」
自分の名が急に出てきたので怪訝な表情を浮かべ、若干後退りしながらカヨが尋ねる。
「ふむ、ワイルド系な少女だとは聞いていたが、倒れている老人の足をぶっ刺すほどとはな……まあ良いわ。カヨよ、お前にわしはすんごい重要な事を言わなければならん……。聞いてくれるな?」
「いきなり呼び捨てで呼ぶなよジジイ。追い剥ぎするぞ」
「実はな……お前はな……」
「おい聞いてんのかジジイ」
カヨの言葉を無視して老人は言葉を繋ぐ。
「お前は勇者なんじゃ!! ……棒の」
「棒の!? 何か響きが卑猥だな!」
老人は驚愕するカヨを見据えて言う。その表情は真剣そのものである。
「実はこの世界にも危機がせまっていてだな……つい最近に魔王が復活したのじゃ! このままでは世界が危なーい!!」
老人は持てる声の全てを出してカヨに告げた。
「……いや、危なーいって言われても……」
「既に剣の勇者、槍の勇者、斧の勇者や盾の勇者も旅立っておる!!」
「剣の勇者とかは分かるけど盾の勇者って何!? どうやって攻撃するのさ!?」
「勇者に選ばれたからには一刻も早く魔王を倒さねばならない……
さもなくば世界は闇に包まれるだろう! ……はあはあ」
老人は気張って言った。一度に喋りすぎたのか咳き込んでいる。
「そんなこと急に言われてもな……」
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