第一節 棒の勇者、水汲みへ

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 老人はうつ伏せで倒れている。表情はこちらから伺う事ができない。とりあえずカヨは木の枝でつついてみる事にした。  ツンツン……、ブス!! 「うぎやああぁ、足があぁぁぁ!」 「わり、間違って刺しちったわ」  つついたつもりだったのだが、勢い余って刺してしまったようだ。老人はカヨに向き直って問い掛ける。 「何なんじゃあんたは!」 「いやね、あんたがここに倒れてたから死んでるかどうか試してみたんだよ。……まあ木の枝刺さったおかげで目覚ましたんだから結果オーライ?」 「オーライ? じゃないわ! 最近のガキはみんなこうなのかい!?」  老人は相当怒っているようで、座った状態のまま杖をブンブン振り回してカヨに説教する。 「悪い悪い。村までおぶってやるから許してよ、な?」  カヨはそう言って老人に近づいた。 「そういやアンタ、カヨとか言う少女を知らないかね? 多分この近くの村に居るはずじゃが」 「何ジジイ? 私に用あんの?」  自分の名が急に出てきたので怪訝な表情を浮かべ、若干後退りしながらカヨが尋ねる。 「ふむ、ワイルド系な少女だとは聞いていたが、倒れている老人の足をぶっ刺すほどとはな……まあ良いわ。カヨよ、お前にわしはすんごい重要な事を言わなければならん……。聞いてくれるな?」 「いきなり呼び捨てで呼ぶなよジジイ。追い剥ぎするぞ」 「実はな……お前はな……」 「おい聞いてんのかジジイ」 カヨの言葉を無視して老人は言葉を繋ぐ。 「お前は勇者なんじゃ!! ……棒の」 「棒の!? 何か響きが卑猥だな!」  老人は驚愕するカヨを見据えて言う。その表情は真剣そのものである。 「実はこの世界にも危機がせまっていてだな……つい最近に魔王が復活したのじゃ! このままでは世界が危なーい!!」  老人は持てる声の全てを出してカヨに告げた。 「……いや、危なーいって言われても……」 「既に剣の勇者、槍の勇者、斧の勇者や盾の勇者も旅立っておる!!」 「剣の勇者とかは分かるけど盾の勇者って何!? どうやって攻撃するのさ!?」 「勇者に選ばれたからには一刻も早く魔王を倒さねばならない……  さもなくば世界は闇に包まれるだろう! ……はあはあ」  老人は気張って言った。一度に喋りすぎたのか咳き込んでいる。 「そんなこと急に言われてもな……」
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