紫煙にかすむ背中

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「もう、永くはあるめェよ」 高杉は記憶を留めておけなくなっていた。 俺と話をしたことも、 会ったことさえも。 姿はあの頃と変わらず、 ただ、奴の中の禍々しい獣は光を失っていた。 いつ頃からだっただろうか。 何かを記す為なのか、高杉は時々、俺に刃を向けるようになった。 斬り付ける訳ではない。 ただ、自分に残せない記憶を刻むように、 俺の体にほんの少しだけ刃を当てる。 痛くはない。 ただ、そうしなければならなかった高杉が痛々しかった。 切っ先が喉元に当てられる。 「オイオイ、あぶねぇって」 高杉の口元は弛み、反応を楽しんでいるようだった。
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