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「ククッ……」
一筋の紅い滴が首筋をつたう。
でも俺は自ら高杉を制したりはしない。
高杉は喉元にあるそれを鞘に収め俺から離れた。
窓辺に腰をおろし、
月を見上げたその横顔は、
諦めて笑っているような、
それでいて今にも泣き出しそうな
そんな顔に見えた。
煙管から昇る
一筋の紫煙が
ゆっくりと拡がり
周りに霞がかかる。
「明日にはぜぇんぶ、忘れちまってんだろうなァ……」
滴る紅をそのままに
傍に寄り添う。
その華奢な肩に手を掛ければ、視線は月を見つめたまま、高杉は俺に寄りかかった。
『忘れちまってもいいじゃねぇか。俺が覚えててやるよ』
すぐに忘れてしまうと知りながら、いつだったか
俺が高杉に言った言葉。
「……銀時……」
「あぁ」
少し微笑んで
そして
高杉は目を閉じた。
~終~
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