第一章 初恋の人

14/14
前へ
/65ページ
次へ
「それが出来ないのを知ってて …ひどいよ 間宮さん。」 泣き出しそうな顔で見つめる知也を 健一はクスッと笑う。 「いっそのこと 秘密を打ち明けて 彼に告白したら?」 その言葉に 知也の瞳から 涙が零れる。 「…ひどい。 何で そんな意地悪言うんだ?」 両手で顔を覆い 肩を小刻みに震わせる知也に 健一は 軽く瞳を閉じた。 「ごめん…。 それ程 君に想われている 彼に嫉妬してしまった。」 健一は 灰皿に煙草を押し付け 火を消した。 「…痛っ。」 小さく声を上げ 身を丸めた知也を見て 健一は身を起こし 肩を抱き寄せた。 シーツに 赤い血が流れている。 「始まっちゃったね。」 「…間宮さんの所為だ。」 「えっ? それはないだろ?」 知也は 健一の側をスッと離れると ベッドを下り 寝室を出て行った。 シーツに付いた血を スッと指で撫で 健一はポツリと呟く。 「重傷だね これは…。」 その瞳は ユラユラと揺れ 少し淋しく光っていた。 <第一章 END>
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加